伊藤 龍平(著)
四六判 260ページ 並製
定価 2000円+税
ISBN978-4-7872-9274-2 C0095
在庫あり
書店発売日 2023年06月20日 登録日 2023年04月11日
怪談の基本を声の文化として捉え、悲話、笑い話、猥談、落語、童話、ネットロア、予言譚、実話など、様々な話を成立させる仕掛けと怪異的な要素の関係を読み解くことで、怪談のメカニズムを浮き彫りにする。「怪談と恐怖の関係とは何か」に迫る論考集。
近年、怪談会や怪談イベントが人気を集め、怪談の動画コンテンツも盛んに配信されるようになっている。なぜ、今も昔も、恐怖を感じさせる怪談は人を引き付けるのか。そもそも、怪談を怪談たらしめているものは何なのか。
怪談の基本を声の文化として捉え、怖がらせたい語り手と怖がりたい聞き手の関係性のなかで生成する怪異をめぐる話として怪談を位置づける。そして、悲話、笑い話、猥談、落語、童話、ネットロア、予言譚、実話など、様々な話を成立させる仕掛けと怪異的な要素の関係を読み解くことで、怪談のメカニズムを浮き彫りにする。
話し手と聞き手の共犯関係や特定の感情を呼び起こさせる話の型・装置に着目して、「怪談とは何か」「怪談と恐怖の関係とは何か」を明らかにする。
序 章 怪談とは何か
1 怪談を語る/怪談を話す
2 話し手と聞き手の共犯関係
3 怪談と怪異
4 話の場の権力と、仕掛けがある話
第1章 子育て幽霊の気持ち――悲話「夜泣きお梅さん」
1 勇払の「夜泣きお梅さん」
2 八王子千人同心の蝦夷開拓
3 郷土史のなかの「夜泣きお梅さん」
4 お梅観音と浄邦盆踊り
コラム1 わが家の怪談
第2章 お岩さんと愉快な仲間たち――笑い話としての「四谷怪談」と「皿屋敷」
1 陽気なお菊さんの皿数えショー
2 怪談の型と、型が生む笑い話
3 新説・鬼ごっこ
4 ゾンビと遊ぶ、ゾンビを笑う、ゾンビに微笑む
コラム2 笑い話「牛の首」
第3章 逆立ちする狐狸狢――猥談「下の口の歯」など
1 股のぞき、袖のぞき、逆立ち
2 炭焼き小屋の怪女
3 「きれいはきたない、きたないはきれい」
4 「歯のある膣」について
コラム3 コテボウズはいるか
第4章 人を溶かす草の話――落語『そば清』
1 医事説話・本草説話から落語へ
2 昔話「とろかし草」
3 日本のヨナ――「蛇の分食」のわけ
4 禿頭奇談
コラム4 「リンゴ食べていい?」
第5章 優しい幽霊たちのいる墓場――鄭清文の童話「紅亀粿」
1 肝試しの夜
2 生者に気づく幽霊、気づかない幽霊
3 替屍鬼と童養媳
4 怪異譚か、純愛譚か
コラム5 思い付き的「羅生門」論
第6章 スマホサイズ化される怪談――ネットロア「きさらぎ駅」
1 十年目の「きさらぎ駅」
2 鉄道怪談の系譜
3 話者たちのいる場所と人称
4 物語化への予感に満ちた言葉
コラム6 「小さいおじさん」考
第7章 流行神はコロナのなかに――予言譚「アマビエ」
1 瓦版からSNSへ
2 妖怪、幻獣、予言獣、そして……
3 現代の流行神
4 アマビエの説話と俗信
コラム7 ある「研究者」の会話
第8章 怪異は、解釈されたがる――実話怪談集『新耳袋』
1 実話とは何か、実話怪談とは何か
2 アマチュアリズムと語りの「空白」
3 「語られざる語り」と向かい合う
4 そして、いくつもの物語が生まれる
コラム8 「かさね」のその後
初出・関連論文一覧
あとがき
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