社会一般
武内 佳代(著)
四六判 288ページ 上製 定価 3000円+税 ISBN978-4-7872-9271-1 C0095 在庫あり
書店発売日 2023年01月27日 登録日 2022年12月21日
金井美恵子、村上春樹、田辺聖子、松浦理英子、多和田葉子の作品を、クィア批評や批評理論を縦横に組み合わせて読み解く。読者のアイデンティティをも揺さぶる「現代小説を読むことの可能性」を、小説表現とクィア批評の往還からあざやかに描き出す。
小説を読むとは、どのような行為なのか。現代の小説は私たちに何を語りかけるのか。 本書では、金井美恵子、村上春樹、田辺聖子、松浦理英子、多和田葉子という5人の作家が1970年代から2010年代にかけて描き出した7つの小説に着目する。これらの小説を、アイデンティティのあり方を多様に読み替え/書き換えていくクィア批評と、動物やケアなどをめぐる批評理論を縦横に組み合わせて読み解き、小説に内在する多様性や小説固有の強度を浮かび上がらせる。 既存の社会秩序や異性愛主義的な社会構造を揺さぶり、読者の主体性やジェンダー/セクシュアリティをめぐるアイデンティティをも変容させていく「現代小説を読むことの可能性」を、小説表現とクィア批評の往還からあざやかに描き出す。現代の小説をふたたび読み返したくなる、「クィアする」文学論。
はじめに 第1章 金井美恵子「兎」――クィアとしての語り 1 危うい近親相姦願望 2 肉食と殺害に惑溺する少女 3 過剰な模倣のゆくえ 4 「少女」の物語から「私」の物語へ 第2章 村上春樹『ノルウェイの森』――語り/騙りの力 1 男同士の絆と女同士の絆 2 31と13 3 語る/騙る女 4 語られた/騙られた死 5 女性の欲望を読み直す 第3章 村上春樹「レキシントンの幽霊」――可能性としてのエイズ文学 1 不可解な孤独 2 眠りのあとで 3 パーティーに参加しない「僕」 4 記録と距離 第4章 村上春樹「七番目の男」――トラウマを語る男 1 「K」と「私」 2 男性性(ルビ:マスキュリニティ)の呪縛 3 「波」の出来事 4 トラウマの語り 5 「私たち」のセラピー的空間 第5章 田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」――ケアの倫理と読むことの倫理 1 ケアの倫理という思考方法 2 潜在化するニーズ 3 女性障害者の困難 4 ケアの倫理と読みの倫理 第6章 松浦理英子『犬身』――クィア、もしくは偽物の犬 1 ケアされる/ケアする犬 2 犬という伴侶種 3 被傷性とケアの倫理 4 クィアな身体 5 不穏なる暴力の気配 第7章 多和田葉子「献灯使」――未来主義の彼方へ 1 障害者的身体をめぐって 2 クィアな身体と反再生産的未来主義 3 献灯使という子ども騙し 4 可能性としてのケア おわりに 初出一覧 あとがき 人名索引 事項索引
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