永吉 雅夫(著)
A5判 516ページ 並製
定価 4000円+税
ISBN978-4-7872-9256-8 C0095
在庫あり
書店発売日 2020年10月20日 登録日 2020年07月29日
1935年(昭和10年)の芥川賞の創設をひとつの文学的事件として、受賞作を銃後/外地/皇民化の視点から読み解き、「戦時昭和」期の国内の作品や外地の文学がどう受け止められたのか、作家たちの人間模様も緻密に考察して、文学と社会の相互浸透を解明する。
1935年(昭和10年)の芥川賞の創設をひとつの文学的事件として、芥川賞受賞作品をさかのぼって取り上げながら時局を語るユニークなスタイルで、戦中から敗戦までの10年間の文学風景に焦点を当てて描く。
当時の作家群像――室生犀星、芥川龍之介、永井荷風、佐藤春夫、太宰治ほかの同時代の作品や活動を検討するほか、堀田善衛の創作実践から敗戦後の日本と中国を論じる。
内務省警保局長として思想対策に辣腕を振るった松本学が主導した文芸懇話会をめぐる直木三十五、佐藤春夫、中野重治たちの動向。学問の自由と大学の自治への統制に対する危機感から結成された学芸自由同盟と直木三十五の対立。小林秀雄の特派員としての中国行と「積極的思想統制」案。佐藤春夫の戦中から戦争直後の思想――。
芥川賞受賞作を「銃後」「外地」「皇民化」の視点から読み解き、「戦時昭和」期の国内の作品や「外地」での文学がどう読まれたのかも緻密に考察することで、社会と文学との相互浸透を解明する労作。
まえがき
序 章 三つの死――芥川龍之介、小林多喜二、北一輝
1 芥川龍之介の死
2 小林多喜二の死
3 北一輝の死
第1章 文芸懇話会と芥川賞の出発
1 文芸懇話会の発足
2 直木とは何だったのか
3 第一回文芸懇話会賞
4 中野重治の苛立ち
5 「新日本文化の会」発足
6 林達夫の「絶望」
第2章 室生犀星の一九三〇年代後半(昭和十二年前後)――小説「大陸の琴」を中心に
1 時代を映す「流行(ルビ:はやり)唄」
2 文学と戦争のあいだ
3 「大陸の琴」の世界
4 外縁から日本の中心へ
5 膨張延伸する最前線へ
第3章 芥川賞と時代1:銃後の生活――統制と総動員
1 出征と恋情
2 英霊と戦争未亡人
3 統制経済の整備
4 不敬作品狩り
5 戦時に暮らす外国人
第4章 芥川賞と時代2:「外地」の日本人――経験としての植民地
1 作者は出征中
2 小林と戦争
3 現地女性との交渉
4 「現地文学」の出現
5 植民地支配者
6 「現地」の不可解を超えて
7 民族の問題をながめる日本人
第5章 芥川賞と時代3:「皇民化」の諸相――帝国における「民族」
1 朝鮮人中学生の苦悩
2 どの方向に生きるか
3 内地の朝鮮人
4 軍事動員へ向けて
5 徴兵制の実施
6 李光洙の涙
第6章 佐藤春夫の奇妙な友情――『風雲』から「旧友に呼びかける」へ
1 一九四五、年頭
2 一九四五、「玉音」後
3 短篇集『風雲』の世界:1
4 短篇集『風雲』の世界:2
5 郁達夫と郭沫若の怒り
6 一九四五、年末
第7章 書くこと/読まれること――太宰治『惜別』の場合
1 太宰の冒険
2 日露戦争と現在
3 引用された魯迅と作家の使命
4 幻灯事件と仙台の「先代萩」
5 竹内説と小説化
6 新たな強制力のなかで
終 章 「惨敗」日本と「惨勝」中国の戦後スタート――「リンゴの唄」と上海の堀田善衛
1 戦後初の映画『そよかぜ』主題歌
2 歌声の落差
3 中国、勝利の現実
4 「終戦」からのスタート
関係年表
初出一覧
あとがき
人名索引
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