A5判 184ページ 並製
定価 2400円+税
ISBN978-4-7872-7442-7 C0074
在庫あり
書店発売日 2022年01月31日 登録日 2022年01月06日
戦時下で公開された日本初の長篇アニメーション『桃太郎 海の神兵』。その映像テクストを精緻に検証し、作品の社会的な背景を探って、『桃太郎 海の神兵』の映像技法の先駆性・実験性と、アジア・太平洋戦争と日本アニメーションの関わりを明らかにする。
『桃太郎 海の神兵』は、1945年、戦時下の日本で公開された日本初の長篇アニメーション、国策アニメーションである。これまでは「日本初」という点で注目され、「プロパガンダ/平和」というイデオロギー的な側面から論じられてきて、映像テクストとそれを支える社会的な背景は正面から検証されてこなかった。
本書では、『海の神兵』の映像テクスト分析を中心におこない、ユビキタス的なありよう、異種混交性・越境性、キャラクター造形の特異性を浮き彫りにして、『海の神兵』の映像技法の先駆性・実験性も明らかにする。
『海の神兵』を支えた当時の文化映画業界や『海の神兵』の東アジアでの受容も掘り起こし、アジア・太平洋戦争と日本アニメーションの関わりを照射する。日本のアニメーション研究の第一人者・渡辺泰氏による「『桃太郎の海鷲』の思い出」も所収。
序 章 なぜ、いま、『桃太郎 海の神兵』を再考するのか 佐野明子/堀 ひかり
1 日本初の長篇アニメーションにして国策映画
2 方法論――映像テクスト分析と映画学
3 アニメーション研究での本書の意義
4 『海の神兵』の先行研究について
5 本書の構成
第1章 『桃太郎の海鷲』の思い出 渡辺 泰
第2章 戦時下のユビキタス的情報空間――『桃太郎 海の神兵』を題材に 大塚英志
第3章 『桃太郎 海の神兵』の異種混交性――テクストの越境性とナショナリズム言説について 堀 ひかり
1 「日本の漫画映画」を確立したい
2 「日本の漫画といふ型」「新しいタイプ」としての『海の神兵』
3 芸術映画社と「文化映画」
4 「文化映画的要素」と「娯楽的要素」
5 「芸術性」とフルアニメーション、そして『ファンタジア』
第4章 『桃太郎 海の神兵』における表象のユートピア――虚構のリアリティーならびに〈擬獣化〉の起源 秦 剛
1 「海鷲」の作られる身体
2 擬人法のメカニズム
3 ジャングルの虚構と現実
4 「特攻死」と「擬獣化」の時代
コラム 中国で先行封切りされた『桃太郎の海鷲』 秦 剛
第5章 戦時下映画業界の統制とアニメーション――文化映画会社統合と軍委嘱映画 木村智哉
1 松竹によるアニメーション映画製作
2 文化映画製作会社と「委嘱映画」
3 情報局による文化映画会社の戦時下統合
4 軍からの委嘱映画製作
第6章 『桃太郎 海の神兵』の実験と宣伝 佐野明子
1 影絵アニメーションの新規性と意義
2 ミュージカルの宣伝力
3 音楽と映像の同期
4 色彩と空間の演出
5 物語映画の話法をもつアニメーション・ドキュメンタリー
6 マルチプレーン・カメラによる対比的な空間とアニメティズムの萌芽
第7章 セルロイド上の帝国と冷戦――韓国初長篇アニメーション『ホンギルドン』における「庶子の美学」 キム・ジュニアン
1 北宏二/キム・ヨンホァン、「少年倶楽部」から『桃太郎 海の神兵』へ
2 シン・ドンホン、漫画からアニメーションの製作へ
3 『ホンギルドン』に至るまでの韓国アニメーションの動力学
4 在韓USISという役者、そして「自由世界」を演じるアニメーション
あとがき 佐野明子/堀 ひかり
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