四六判 236ページ 並製
定価 2400円+税
ISBN978-4-7872-3524-4 C0036
在庫あり
書店発売日 2023年09月19日 登録日 2023年08月09日
社会的養護の現場では、どのような困難が経験され、施設の何が問題とされているのか。児童養護施設や母子生活支援施設、里親などの調査を積み重ね、医療・教育・ジェンダーなどの多角的な視点から、家族・家庭と施設の専門性の間に生じるジレンマに迫る。
近年、児童虐待が社会問題化している一方で、社会的養護のもとで暮らす子どもへの支援も注目を集めている。これまで援助の「あるべき姿」などを中心に議論されてきたが、現場ではどのような困難が経験され、施設のありようをめぐって何が問題とされているのか。
本書では、児童養護施設や母子生活支援施設、里親などを対象に、各施設のフィールドワークを積み重ね、関連する政策文書や史料を丹念に読み込む。それらをとおして、児童養護施設で求められる「家庭」のあり方、施設で過ごす子どもや職員が抱える葛藤、愛着概念の変容、発達障害と施設の関係性、母親という規範などを浮き彫りにする。
医療、教育、ジェンダーなどの多角的な視点から、子どもを養護する現場や制度が抱える規範や規律を照射して、「家族・家庭」と「施設の専門性」の間に生じるジレンマを明らかにする。
序 章 「社会的養護の社会学」のインプリケーション 藤間公太
1 戦後日本における社会的養護の展開
2 「社会的養護の社会学」のインプリケーション
3 本書の概要
第1部 社会的養護と「家庭」
第1章 母性的養育の剥奪論/愛着理論の再構築と里親委託――一九七〇―二〇〇〇年代の里親関連専門誌の分析から 土屋 敦
1 分析資料
2 一九七〇年代から二〇〇〇年代の家庭養護促進協会の展開と母性的養育の剥奪論/愛着理論
3 「新しい家族」(養子と里親を考える会)での議論の変遷
第2章 社会的養護政策での「家庭的」の意味とその論理――二〇〇〇年代以降の政策関連資料から 野崎祐人
1 「家庭的」の意味とその論理
2 「家庭的」と「専門的」との境界
3 「家庭的」のなかの「家庭」の定義の困難さ
第3章 児童養護施設が「家庭的」であること――中規模施設と地域小規模施設の比較から 三品拓人
1 児童養護施設での「家庭的養護」の推進とその問題背景
2 本研究の対象と方法
3 施設生活のなかから浮かび上がる「家庭」
4 小規模化された施設の「家庭的」要素
5 児童養護施設で「家庭」が参照される意味の違いに着目して
第2部 子どもの教育体制と施設内規律
第4章 児童養護施設で暮らす子どもたちの〈仲間〉と〈友人〉――施設と学校でともに生きるということ 宇田智佳
1 先行研究の検討と分析課題
2 調査概要
3 児童養護施設での〈仲間〉関係の形成
4 学校生活での施設入所児同士の〈仲間〉関係
5 友人関係の限定性
第5章 児童養護施設の職員は子どもの医療化とどう向き合ったのか 吉田耕平
1 児童養護施設での医療化の起源
2 児童養護施設での医療化の進行
3 まとめ
第6章 母子生活支援施設の母親規範を問う――介入手段としての生活の決まりに着目して 平安名萌恵
1 研究背景と問題設定
2 調査対象と調査方法
3 児童福祉施設としての生活の決まり
4 リスクに脆弱な存在――職員の入居者に対する認識
5 母親規範による介入の正当化――職員の業務に対する認識
終 章 二〇〇〇年代以降の社会的養護と社会規範・専門概念・ネットワーク 土屋 敦
1 社会規範・専門概念・ネットワーク
2 社会的養護の社会学をめぐる今後の課題
あとがき 土屋 敦
【お詫びと訂正】
本書に以下の誤りがありました。
12ページ:4行目
【誤】高等学校への進学率
【正】高等教育への進学率
読者のみなさまにご迷惑をおかけしたことを、心からお詫びします。
藤間公太/青弓社編集部 2023年9月20日
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