大槻 奈巳(編著)
A5判 268ページ 並製
定価 2800円+税
ISBN978-4-7872-3521-3 C0036
在庫あり
書店発売日 2023年07月18日 登録日 2023年05月23日
ジョブ型雇用の代表格であり、「自由な働き方」というイメージもある派遣労働者は、どのような思いで働き、自身のキャリアと向き合っているのか。インタビューやウェブ調査を駆使して、雇用や格差などの実情を明らかにし、多様な働き方の可能性を検証する。
労働人口の減少などを背景に、職務を軸にした雇用が広まりつつある現在、派遣労働者はジョブ型雇用の代表格である。「自由な働き方」というイメージもある彼/彼女たちは、どのような思いで働き、自身のキャリアと向き合い、ライフコースを歩んでいるのか。派遣労働を取り巻く困難や課題はどこにあるのか。
大きな転換点になった2015年の労働者派遣法の改正で掲げられた派遣期間の制限見直しやキャリアアップ措置、待遇の改善などの実態を、派遣労働者40人や派遣元事業主などへのインタビュー、1,650人へのウェブ調査を組み合わせて明らかにする。
そして、雇用の安定やキャリアの向上が必ずしも実現しておらず、給与や雇用形態で不安を抱えながら働くことを余儀なくされている現状をあぶり出す。同時に、男女間の格差やハラスメントの実態、コロナ禍での「被害」も浮き彫りにする。
5年に及ぶ調査から派遣労働の実情を照らし出し、それを通して正社員の労働実態や多様な働き方の可能性も検証する。
はじめに 大槻奈巳
第1章 事務職派遣労働者の直接雇用転換と選択 江頭説子
1 直接雇用転換と派遣労働者の選別
2 雇い止めが発生する要因
3 派遣として働き続ける派遣労働者の選択
4 選別機能としての直接雇用転換と労働者の選択
第2章 事務派遣労働者の働き方と自律性 大槻奈巳
1 派遣労働や派遣法改正への従来の指摘
2 事務職派遣経験者たち
3 派遣労働者になったきっかけ――キャリア形成と自律性
4 知識・スキルの取得
5 契約期間中の離職と自律性
6 派遣労働者は、正社員としての働き方/派遣の働き方/二〇一五年改正法の影響をどうみているのか
第3章 派遣労働を積極的に選択するのは誰か 鵜沢由美子
1 Aさんの事例――旅行添乗/通訳ガイド/五十歳代後半/女性
2 Bさんの事例――ソフトウエア開発/四十歳代前半/男性
3 Cさんの事例――看護師/三十歳代後半/女性
4 Dさんの事例――主として英語を生かした事務職/四十歳代前半/女性
第4章 派遣労働の現状と課題――派遣労働者として働く人たちの自己概念に注目して 田口久美子
1 二〇一六年インタビュー調査
2 自己概念の抽出
3 総合的考察
第5章 派遣労働者の働く現状と満足度――ウェブ調査の結果から 大槻奈巳
1 勤務の状況
2 二〇一五年改正法による変化について
3 派遣として働く気持ち
4 派遣で働く満足度や正社員志向に何が影響しているか
第6章 事務職派遣労働者の無期雇用派遣転換と選択 江頭説子
1 調査の概要と分析枠組み
2 無期雇用派遣転換の概要
3 無期雇用派遣転換と事務職派遣労働者の選択
4 労働市場と無期雇用派遣転換
第7章 二〇一五年派遣法改正が増幅した「正社員」の多様化――無期雇用派遣社員とは:技術者を中心として 鵜沢由美子
1 派遣労働者の現状――ウェブ調査から
2 技術者派遣の背景――派遣元会社へのインタビューを中心に
3 派遣技術者の実態――インタビューから
第8章 派遣労働者をめぐるハラスメント 田口久美子
1 分析の視点
2 インタビュー調査からみるハラスメントの現状
3 ウェブ調査からみるハラスメントの現状
4 これからに向けて
補論 新型コロナウイルスの影響と派遣労働 江頭説子
1 被害構造論のコロナ問題への応用――本研究の分析の枠組み
2 「とくに変わりはない」と回答する派遣労働者
3 「被害の非認識」「被害の沈黙化」と〈被害の潜在化〉
4 「被害の沈黙化」の背後にある自己責任論
5 〈被害の潜在化〉と被害放置の阻止
おわりに 大槻奈巳
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