圓田 浩二(著)
四六判 200ページ 並製
定価 2400円+税
ISBN978-4-7872-3510-7 C0036
在庫あり
書店発売日 2022年08月25日 登録日 2022年06月22日
自身のダイビング経験をもとに沖縄の観光開発と自然保護の実態を追跡調査し、レジャースポーツ産業の変遷、漁業関係者との共存のあり方、移住者の排除と共生などの分析を通して「基地のなかの沖縄」だけではない「もう一つの沖縄」の光と影を鮮明に描出する。
青い空、白い砂浜、古き良きシマンチュたちによる暖かなコミュニティー。沖縄の慶良間海域は、世界中のダイバーにとって一生に一度は行きたい「楽園」であり、2014年には31番目の国立公園に認定された。
しかしその背後では、島の住民「シマンチュ」による本土からの移住者である「ナイチャー」の排除や過疎化、海水温上昇やオニヒトデの食害によるサンゴ礁の減少など、問題が山積している。そして、それらの問題が交錯する地点に、スクーバ・ダイビングという営みがある。
座間味村の海に魅せられてダイビングショップの出店に乗り出すナイチャーに対して、よそ者を排除して既得権益を守りたいシマンチュ。国内に国立公園を増やして自らの手柄にしたい環境省。彼らが出会うことで、次第に環境保全という言葉はよそ者を排除するために利用されるようになる。一方で、「ダイビングで飯が食えたらいい」と個人的な動機で移住してきたナイチャーは本土の文化を持ち込み、島民と結婚して家族を作り、意図せず旧来の島の文化を変容させていく。いまや過疎化が進む島の年中行事にはナイチャーの協力が欠かせない。
自らが沖縄に住むダイバーであり座間味村の海に取り憑かれた著者が、スクーバ・ダイビングをめぐるフィールドワークを積み重ねて、沖縄と本土の間の複雑な経済・文化的諸関係の様相を浮き彫りにし、その本質に迫る。
はじめに
第1章 日本のスクーバダイビングの歴史
1 スクーバダイビングとは何か
2 スクーバダイビングの発展とスピアフィッシング
3 スピアフィッシングの禁止
4 新しいダイビングスタイルの模索
第2章 座間味村にダイビング観光が誕生――誰がいつ始めたのか
1 座間味村のダイビング産業を探る
2 沖縄県のダイビング産業の発展と衰退
3 座間味村のスクーバダイビングの歴史――いつ始まったのか
4 座間味村でのダイビング産業の始まり――誰が始めたのか
第3章 「ダイビングの島」の発展と変容――沖縄への県外移住者たち
1 「ダイビングの島」はどう発展したのか
2 それまでの座間味村
3 移住者たち
4 「島の人」になることと島の「本土化」
第4章 排除と共生――座間味村のダイビングショップ問題
1 座間味村のダイビングショップが抱える問題
2 ダイビングショップと漁協との関係
3 座間味村のダイビングショップ問題
4 慶良間の海は誰のものか
5 新規出店と独立問題
6 排除と共生
第5章 ダイビングポイントを守る
1 なぜ環境保全なのか
2 ダイビングポイント
3 座間味村のポイント保全活動
4 環境保全の観点からみたポイント保全活動の意義
第6章 慶良間諸島国立公園の誕生
1 慶良間諸島国立公園
2 慶良間海域の公式化
3 なぜ水深三十メートルなのか
4 水深三十メートルから見える社会
第7章 現代人はなぜダイビングにはまるのか
1 スクーバダイビングが抱える問題点
2 スクーバダイビングのフローと遊び
3 スクーバダイビングの行為分析
4 現代社会のダイビング
参考文献一覧
おわりに
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