山本 奈生(著)
A5判 280ページ 並製
定価 3400円+税
ISBN978-4-7872-3492-6 C0036
在庫あり
書店発売日 2021年07月26日 登録日 2021年05月26日
摘発と逮捕、規制史と統治性権力、抵抗と社会運動、そして嗜好する人たちの生そのものを、アメリカと日本の大麻政策の百年間を精査して論じる。参与観察も交えて、有害か自由化かという論争を超えた地平から一石を投じる文化社会学・犯罪社会学の成果である。
芸能人の逮捕ニュースや使用罪の賛否で耳目を集める大麻。それは、麻薬なのか、医薬品なのか、嗜好に適したハーブなのか、覚醒剤への入り口なのか。摘発して厳罰に処すべきなのか、それとも自由化すればいいのか。
禁酒法と大恐慌後の1930年代に「黒人のドラッグ」として大麻を規制したアメリカでは、戦後のビートニク、ベトナム反戦運動、ヒッピー、摘発を強化した「ドラッグ戦争」などを経て、現在は非罰化・合法化する大都市と州が増えている。同様にヨーロッパも非罰化へと向かっている。
日本では、1930年の麻薬取締規則や48年の大麻取締法で規制を強化して摘発を重ねている。しかし一方で、アメリカの対抗文化に呼応しながらも独自に自由化運動を展開している。具体例として、新宿ビートニクからコミューン運動、レゲエやラスタ思想との関連、スピリチュアリズムへの傾倒、非犯罪化市民運動などの潮流を概観する。
さらに、戦前の帝国時代に各家庭に頒布した神宮大麻も取り上げて、政策の変遷を描く。
大麻を語ることは、摘発と逮捕、規制史と統治性権力、抵抗と社会運動、そして嗜好する人たちの生そのものを論じるということである。
文化社会学と犯罪社会学の立場から大麻所持の厳罰化の100年間を精査して、有害か自由化かを超えた大麻をめぐる論争に一石を投じる。
序 章 なぜ大麻を語るのか
1 本書の視点と構成
2 本書の社会学的視座
第1章 ドラッグとしての大麻――ドラッグ論の視座と刑罰の多元性
1 ドラッグとは何か
2 ドラッグをめぐる状況
3 刑罰の多元性とハーム概念
第2章 現在の欧米における大麻政策――非罰化と合法化をめぐる統治性
1 変容する政策と非罰化
2 大麻に関する政治と政策の動向
3 刑罰規制をめぐる諸論点と統治性
4 アメリカの合法化と市場
第3章 戦前アメリカの大麻規制――ジャズ・モラルパニック・人種差別
1 初期的な大麻規制の概要と社会背景
2 大麻規制の始発点――一九一三―三七年
3 「リーファーマッドネス」言説とメディア
4 ハーレム街区の「反抗」と喫煙
5 大麻とモラルパニック
第4章 ドラッグ戦争と政治――ゲートウェイと新保守主義
1 ドラッグ戦争の構図
2 ニクソン政権の「法と秩序」
3 内戦の展開――ドロップアウト、ゲートウェイ、割れ窓理論へ
4 レーガン以後
第5章 日本での大麻の変遷――近代帝国主義から戦後の道程
1 日本での概略と時代区分
2 東西の医薬品と、帝国日本の表徴――戦前期
3 戦後日本の大麻――ポツダム省令からフーテン族、「芸能界汚染」まで
4 現代日本の大麻
第6章 大麻と精神医学――主体なき責任の帰属
1 戦後日本の大麻と精神医学
2 大麻精神病という診断
3 ドラッグ政策の転換
4 柔らかな政策の一歩手前で
第7章 紫煙と社会運動――戦後日本の大麻自由化運動
1 戦後日本の大麻運動
2 前史と状況
3 大麻非犯罪化運動の展開
4 非犯罪化運動という場
5 大麻自由化運動の群像と今後
終 章 大麻規制と人々の生
1 大麻と懲役刑
2 本書の政策的含意
3 今後の展望と状況
あとがき
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