丹羽 典生(編著)
A5判 332ページ 並製
定価 3400円+税
ISBN978-4-7872-3481-0 C0036
在庫あり
書店発売日 2020年12月23日 登録日 2020年10月20日
大学応援団の変遷、プロ野球の私設応援団の実態、伝統芸能とアイドルに熱狂する忘我現象などをフィールドワークに基づいて分析し、応援する人とされる人の世界を考察する。応援文化を多角的に描いて、「他者によって自分の存在を確認する行為」を検証する。
ひいきのプロ野球チームを熱烈に応援して勝敗に一喜一憂し、アイドルを追っかけてオタクの生活に浸る。応援団のリードに手拍子を合わせる。応援団としてファンを統制する。
他者を激励して成功を自分のものとし、失敗を自分の責任のように背負い込む応援するという行為を、どういう心性が支えていて、生活にどのように位置付けているのだろうか。大学応援団の実態や、スポーツと芸能の現場――特にプロ野球の私設応援団と、親衛隊からヲタ芸まで――をフィールドワークに基づいて分析し、選手・演じ手と観客との関係を考察する。
大学応援団の歴史や因習に縛られた上下関係、「男の世界」に女性が入り込んで生じるジェンダー問題、伝統校の新入生へのイニシエーション行為、それらが時代とともに変貌するさまを解明する。
また、プロ野球の私設応援団が引き起こした事件と無秩序の実態、その後の統制と管理、トライアスロンなどの参加型スポーツイベントの地域住民と参加者の交流、さらには伝統芸能とアイドルに熱狂する忘我現象とは何か、にも迫る。
応援文化を多角的に描くことで、「他者によって自分の存在を確認する応援という行為」を照らし出す。
序 章 野次、喝采そして応援――応援の人類学的研究に向けて 丹羽典生
1 応援とは
2 応援へのアプローチ――スポーツと芸能を中心に
3 応援という研究領域の開拓に向けて
第1章 共感と感情的高揚からみる応援・支援――キリバス人・バナバ人の歌と踊りの事例に基づいて 風間計博
1 集団内の「感情的結合」
2 共感と他者理解の人類学
3 キリバス・ダンスが生み出す一体感
4 バナバ人の歌劇が喚起する共感
第1部 応援する組織――大学応援団を中心に
第2章 日本の大学応援団の原型――その変化と組織秩序が示唆する論点を考える 丹羽典生
1 応援団の原型と大衆化
2 二〇〇〇年代の応援団への民族誌的接近――関西地区の国公立大学の事例を中心に
3 原型の創出とその変化
第3章 日本の大学応援団での女性応援部門の創設と展開――神戸大学応援団を主な事例として 吉田佳世
1 大学応援団とは
2 女性応援部門創設以前――応援に参加しない女性部員
3 バトンによる女性応援の登場
4 三部制の確立――一九八〇年代
5 女性部員の役割とその変化
第4章 大学応援団の吹奏楽――関西学院大学応援団総部吹奏楽部の事例を中心に 戸田直夫
1 関西学院大学での現在の応援形態の確立
2 応援活動の分析
3 吹奏楽部としての活動
4 応援と演奏のはざま――音楽的要素の比較分析
第5章 伝統校という歴史空間を構築する応援団――岩手県立盛岡第一高等学校の事例から 瀬戸邦弘
1 バンカラ高校と応援団
2 盛岡一高における大運動会
3 ドラマトゥルギーによる通過儀礼
第6章 時代を映す鏡としての応援団――ある戦後新設高校の事例から 小河久志
1 三高応援団
2 応援団の変化
3 変化をもたらした外的要因
第2部 応援する人/される人の関係――スポーツと芸能の場から
第7章 集合的応援での統制と管理――日本のプロ野球私設応援団の管理をめぐる変遷から 高橋豪仁
1 観客の逸脱行動
2 集合的応援行動による観客の統制
3 私設応援団の管理
第8章 バンクーバー暴動とは何だったのか――北米プロスポーツリーグのファンダムをめぐって 立川陽仁
1 北米のプロスポーツリーグのファンダムとは
2 バンクーバー暴動の実際
3 誰が暴れたのか
第9章 応援に表象される参加型スポーツイベントの定着化――長距離トライアスロン大会を例に 山田 亨
1 スポーツを消費する――観戦型スポーツと参加型スポーツ
2 参加型スポーツの華やかさと非日常性
3 大会誘致時に着目した応援のかたち
4 応援が示す大会の定着化
第10章 演じる見物の諸相――芸能と祭における見物と演者をめぐって 笹原亮二
1 違和感の在りか
2 能と見物
3 花祭と見物
4 見物の悪態と褒め詞
5 民俗芸能と見物
6 演じる見物
7 見物と演者の依存関係
第11章 アイドルを声援することの系譜学――親衛隊からヲタ芸まで 難波功士
1 一九七〇―八〇年代の女性アイドルと親衛隊
2 アイドル冬の時代と応援スタイルの変化
3 ヲタ芸の誕生とアイドルの変容
あとがき 丹羽典生
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