大出 春江(著)
四六判 336ページ 上製
定価 2800円+税
ISBN978-4-7872-3440-7 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月 2018年09月 書店発売日 2018年09月27日 登録日 2018年08月27日
戦前から戦後、そして現在に至る産婆・助産婦の実践の歴史を、ライフヒストリー、雑誌分析、行政資料などから多角的に描き出す。出産の近代化を支えた産婆・助産婦の営みから、「産む女性にとって何が必要か」をともに考える「助産」の重要性を説く。
日本の出産が大きく変容するのは戦後のことだといわれてきた。つまり「お産は病院にいってするもの」という常識の定着である。ところが、日本が急速に近代化していく1920年代にはすでに都市を中心に施設分娩は始まっていた。大正期に広がる社会事業が出産の医療化の社会的基盤を提供し、都市のサラリーマン家族や働く女性に施設での出産が選好されていったのである。
出産の近代化を支えた産婆・助産婦は、医師の統制や警察・行政の監視との緊張関係を常にはらみながら、女性たちの出産を支えてきた。戦前から戦後、そして現在に至る産婆・助産婦の実践の歴史を、ライフヒストリー、雑誌分析、行政資料などから多角的に描き出す。
妊婦や家族のサポート、地域の女性たち――産む/産まない/産めないにかかわらず――のケアを実践してきた産婆・助産婦の役割にあらためて光を当て、「産む女性にとって何が必要か」をともに考える「助産」の重要性を説く。
まえがき
序 章 産婆・助産婦・助産師の近代
1 大正期生まれの開業助産婦ツルのライフヒストリー
2 戦後の有床助産所の経験――一九六三年のI助産院日誌から
3 有床助産所と地域の助産婦が果たした役割
第1章 明治期日本の助産婦に向ける医師の統制と期待――出産の正常と異常の境界をめぐって
1 問題関心
2 出産の医療化論の空白と「助産之栞」を読む意味
3 緒方正清の助産婦教育と基本的姿勢
4 助産婦に対する産科医の期待――新潟助産婦学校校長・高橋辰五郎の場合
5 産む身体の区分をめぐる医師と助産婦の分業――医学士・古川栄の助産職観
6 正常と異常の境界がつくられるとき――助産婦が遭遇する難産と対処法
7 生命との対峙――自立性(ルビ:オートノミー)が鍛えられる場
第2章 性と出産の近代と社会統制――雑誌メディアからみた衛生観念・家族規範・国民意識の形成とその回路
1 〈生命監視装置としての新産婆〉という視点の再検討
2 近代産婆と医師の関係
3 「助産之栞」からみる性と出産の近代
4 統制のゆくえと担い手
5 性と出産の統制と産婆
第3章 産婆の近代と出産の医療化――「助産之栞」を口述史料として読む
1 「生きられた経験」としての出産の医療化
2 一九一〇年代に歓迎された陣痛促進剤――「ピツイトリン」の衝撃
3 腹式帝王切開術の定着とピツイトリン
4 構成される出産の正常と異常の境界――三宅小民の症例報告を中心として
5 「助産之栞」が示す対話的性格の意義
第4章 産師法制定運動の興隆と終焉
1 「生るべくして生れなかった」法律をめぐって
2 産師法制定運動の展開と産婆会の全国組織化――一九二五―二七年
3 大日本産婆会と産師法制定運動
4 女性が産院出産を選好した要因
5 産婆は「療属」なのか
第5章 出産の戦後史
1 出産と医療
2 儀礼の変遷
3 出産情報の流通と展開
4 戦前と戦後の連続性
5 「産む私」が本当に主役になる出産を目指す
第6章 戦後の助産婦教育
1 GHQ公衆衛生福祉局の助産婦「民主化」政策
2 戦前の産婆教育との不連続性
3 戦後助産婦教育カリキュラムの変遷
4 等閑視された助産の専門家養成
終 章 「助産」という実践を見えなくさせたもの――助産所と助産施設の違いを中心に
1 助産実践の周辺化
2 一九五〇年代に進行した出産の二つの施設化
3 助産所とは何か――医療法と『母子衛生の主なる統計』の記述から
4 助産施設とは何か――児童福祉法の成立過程と記述から
5 戦前期の産院との断絶
6 産む身体への配慮と出産の医療化
あとがき
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