富田 昭次(著)
四六判 288ページ 並製
定価 2000円+税
ISBN978-4-7872-3416-2 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月 2017年05月 書店発売日 2017年05月26日 登録日 2017年02月09日
「客人の快適性を確保し、満足度を高めるために、どう努めるのか」。客人をもてなしてきたホテルには、過剰ではないこまやかなサービスの精神がある。ホテルと旅館に関する逸話を集め、所蔵する図版を示して、「おもてなし」文化の成り立ちや幅広さを縦横に描く。
もてなしとは「客人の快適性を確保し、満足度を高めるために、どう努めるのか」だ。
2016年の訪日外客数が2,400万人を超えた。さらに、東京オリンピック・パラリンピックの開催もひかえて訪日客数も急増する見込みで、「おもてなし」に注目が集まっている。
ホテルや旅館が「おもてなしの最前線」だ。近代から150年間、目配りのこまやかさで客人をもてなしてきたホテルの源には、「どんなサービスが大切か、それは人それぞれ」という、過剰ではないサービスの精神がある。
ホテル業界の専門誌で健筆をふるう著者が、ホテルに関する逸話を集め、「おもてなし」という観点から新聞や雑誌、テレビなどの報道や海外の事例も読み込み、所蔵する図版を示しながら、「おもてなし」文化の成り立ちや幅広さを描く。
はじめに――近代のおもてなし事始め
こんなところにホテルが建つのだろうか/「働く人たちの心が明確に存在している」/業界が協力して取り組んだサミットでの接遇/幕末に見られた一億五千万円の大饗宴/江戸前の味はアメリカ人には淡泊すぎた?/財政難のなか、国賓第一号のエジンバラ公を接遇/西洋的な宮殿だったら、がっかりしただろう/延遼館で過ごした穏やかな日々/国家建設の成果を示した延遼館と宴会マニュアル/東京府知事主催の華麗なる夜会
第1話 創業以来の社是「至誠」のおもてなし
ホテルは国家的事業であり、国民外交である/繁盛するは、サービスにあり/近代日本を「建設」する時代に創業/「時に客引となり、料理人となり、給仕人となり」/客に不愉快な思いをさせない段取り/毅然とした態度がホテルの評判と信用を高めた
第2話 和の意匠でお出迎え
ホテルオークラ本館改築報道の衝撃/平家納経の感覚を再現せよ/欧米の模倣を避けるべし/花御殿は和風ホテルの頂点をなす作品/日本人にも居心地がいい花御殿
第3話 送迎と遊覧案内も腕の見せどころ
一九六〇年代はハイヤー部が活躍/格式を表した特別仕立ての馬車/顧客の不満から生まれた自動車会社/ヘンリー・フォードの便宜を受けて/欧米にも見られないガイド嬢の活躍
第4話 旅館のくつろぎをホテルに盛り込む
わずか九室の和ホテルが開業、その特色とは/外国へ見学に行くのは間違いだ/旅客にも経営者にも便利な和洋室
第5話 サービス料制度が生まれたもう一つの理由
チップを出す人が減っている/チップの有無や多寡で接遇を変えてはならない/サービス料制度導入の経緯とは/戦前にも実施されていたサービス料制度/ロンドンにあったノー・チップ制のホテル/英文でサービス料を説明する日本のホテル/民主主義の世の中だからチップを廃止に/煩わしい存在だった茶代/かつての旅館には明確な宿泊料制度がなかった/茶代に悩まされた「坊っちゃん」/満州の経営者が提言した茶代の全廃/茶代と心付け、それぞれをいくらにするか/好評だった茶代不要のクーポン券
第6話 外国人旅行者が惚れ込んだ日本のホテル
台湾人に注目された東急ホテルの成功/明治初期の有名ホテルが見物の対象になっていた/客の心のなかの望みをかなえてくれる給仕たち/不自由さを感じさせるほどの美しい部屋/こちらにも女性従業員に注目する人たちが/京都のホテルで最高の支配人/ホテル不足を嘆く日本人女性/ホテルは最も満足すべきもの/議論の余地なくスエズ以東で最高/盲導犬同伴の青年を喜ばせた現場の判断/商売気を離れたシノさんの誠意
第7話 外国人は旅館に何を感じ、何を求めたか
イギリス人女性が見た明治・日本の本当の姿/宿の多くは「驚くばかりにすばらしかった」/旅館の利用法を教えたチェンバレンの旅行案内/割高な宿泊費に憤慨したイギリス人/悪臭や騒音などに苦しんだ外国人/風呂番にチップを与えていた日本スキーの父/アメリカ人一行百余人、日本を体験す/朝食だけは西洋式を望みたい/外国人を応接するときはこうしよう/一軒の旅館から日本の歴史を読み解いたアメリカ人
第8話 渋沢栄一が残した言葉
帝国ホテルは私設外務省/外客を積極的に誘致するという発想/ズボンは必ず“寝押し”をせよ/日本への理解を促進させた「ツーリスト・ライブラリー」
第9話 コンシェルジュの組織力を支えるもの
始まりはネットワーク作り/敬意を得るまでに至った職種/“法王に次ぐローマで最も有力な男”/コンシェルジュの認知度が低かった日本では……/私たちは外交官であるという誇り
第10話 日本には和服姿の“天使”がいた
心を和ませる金銀の折り鶴/六十年近く勤続できた秘訣/入り口には和服姿のグリーターが/紫の振り袖姿で蝶のように舞う/行儀見習いや花嫁修業の場に/最初の受け答えでわかる良し悪し/旅館の女中に不満を抱いていた谷崎潤一郎/情報通のコンシェルジュのような女中
第11話 自然を心から賛美する
自然に埋もれた静寂感/「読書するためのホテル」とは/国際村が長続きする秘密/孤立した場所そのものが魅力
第12話 厨房という小宇宙の内と外で
「料理人はお客さまと親密になれ」/利用者の満足度を高めたワイルの革命/厨房の環境を快適にすると……/厨房軽視に警鐘を鳴らした設計の専門家
第13話 約束事を理解してもらうために
着席順位の札から始まったエチケット/ユニークな「あなた様は只今どちら?」カード/チェンバー・メイドと部屋女中/深夜の靴磨き、そして前金での支払い/客に恥をかかせないのもおもてなし
第14話 おもてなしの担い手を育てる
原点は宗教的な慈悲の精神から生まれた宿泊施設/「仏作って魂入れず」を改善するために/レストランに鬼面のような謎の彫刻が/ホテルと旅館が一緒に発展するために/「卒業生が飛ぶように売れる私立学校」/外国人はホテル従業員を通じて日本を知る
第15話 あの人が愛用した理由とは
莫大なツケをホテル経営者が帳消しに/休憩用の椅子を廊下に配置/川端康成が発見したホテルの精神/「なつかしい日本の静かさがある」/「私が松竹の担当」と公言した女中のおゆうさん/作家のためにパンを神戸から仕入れた温泉宿/「随分粗末な所だが」、「絶佳の環境」/貧乏学生から一流の文化人まで
第16話 知恵と工夫を結集させて――「西の迎賓館ホテル」誕生秘話
大阪を牽引する人々が発案/初めての客室冷房設備が評判に/静かなホテルへのこだわり/従業員に特別の愛情を抱いた支配人
第17話 名ホテリエ、それぞれの流儀
戦勝国の元帥もただの宿泊客/「太平洋の橋」となるつもりで/ミスター・シェイクハンドの誕生/もう一歩近づくための握手/ホテルに住み込む総支配人/従業員の意識を高めるヴィジブル・マネジャー/全ヒルトンの基本になった最初の訓示/金儲けのためにやろうという発想は間違いだ/チームワークを緊密にするために/上野駅前で客引きを経験して/「素人っぽい処が実にいい」/広告から読み取れるホテル哲学/豪華な誕生日パーティーの裏で
第18話 職人としての「酒の番人」、その心意気
静寂を破る甲高い声を和らげた“魔法”/客に尊敬されたバーテンダー浜田晶吾/今井清はなぜマティーニに注目したのか/人の飲酒動向の全体を把握する/組織誕生の裏には危機感があった
第19話 庭園は屋根がないもう一つの客室
荒廃した名園を復活させた経営者の才覚/支配人は庭園の守り番/庭は屋根のない部屋である/庭園旅館と銘打っていた老舗/庭が旅館の中心だった/心に何かを訴えかけてくる庭の石/庭園文化が成熟した京都で/最高の「もてなし」は美しい庭園/庭を有機的に取り込んだ建築家ライト/名人・七代目小川治兵衛の活躍
第20話 それは一つの作品から始まる
建物に生命を吹き込む芸術作品/世界の優秀作品でおもてなし/ホテルは無料の美術館/掛け軸から抽象版画へ/現代アートで埋め尽くされた客室
参考文献
おわりに――過去四半世紀の出来事を振り返って
日本のホテルの勢力図を変えた外資系ホテル/新しい仕組みや考え方がどんどん投入された/三十年前にすでに現れていた人気格安旅館/どんなサービスが大切か、それは人それぞれ/移り行くおもてなし、変わらないおもてなし/新しい視点、社会へのおもてなし/明治期のイギリス人旅行者が下した評価/おもてなし上手、その源には何が……
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