柄本 三代子(著)
四六判 264ページ 並製
定価 2000円+税
ISBN978-4-7872-3406-3 C0036
在庫あり
奥付の初版発行年月 2016年07月 書店発売日 2016年07月15日 登録日 2016年05月20日
「食べる」という日常生活を取り囲む社会的・経済的・政治的な背景を解きほぐし、不安とリスクコントロールを迫る科学言説の問題性に切り込む。食の安全・安心をめぐるリスクコミュニケーションの限界と可能性を照らし出し、食をめぐるリテラシーを提言する。
いまコンビニで食品を手に取れば、「脂肪を燃やす」「血糖値を抑える」「肌に潤いを」という言葉とともに、ラクトフェリンやヒアルロン酸などの成分が提示されている。私たちは「食べ物と科学を食べる時代」に生きているのである。
健康食品、遺伝子組み換え食品、ヘルスケア産業、マグロ水銀報道、水俣病、BSE、中国冷凍餃子事件、セシウム濃度……。「食べる」という日常生活を取り囲む社会的・経済的・政治的な背景を解きほぐし、「健康であれ」というメッセージが人々に不安=リスクをどのように提示しているのかを明らかにする。そして、「リスクコントロールをして正しい市民たれ」と私たちに迫る健康言説の問題性に切り込み、食の安全・安心をめぐるリスクコミュニケーションの限界と可能性を照らし出す。
あるときには照れくさくてくすぐったい、でも懐かしい家庭の味を思い出し、あるときには「まずい」とげんなりしながらも笑いあう。不安・リスク・科学から距離をとり、「食べる」という豊かな営みを私たちの手に取り戻すリテラシーを提言する。
はじめに
第1章 食とリスクのマトリクス
1 〈権利/手段としての健康〉の棄損、〈責務/目的としての健康〉の推進
2 新自由主義のもとでの戦略としてのヘルスケア
3 食のリスクをめぐる関心と不安の高まり――政策技術の変容
4 食とリスクのマトリクス
第2章 食べることと知識
1 食べることについて社会学で扱うということ
2 リスク論の系譜
3 リスク論におけるカルチュラリズム
4 人々の知識という問題圏
5 状況づけられた解釈――私にとっての真理
第3章 市民とは誰か
1 シティズンシップをめぐる規範性の問題
2 上から権威づけられたシティズンシップと「よき市民」
3 非市民の構築――規範性Ⅲの困難
4 見えない恐れへの連帯は可能か
第4章 テクノフーズの氾濫――科学を食べなさい
1 私たちは本当にそれを欲していたのか
2 テクノフーズ誕生の歴史的背景
3 「三次機能」が(ヒト生体に対してではなく)社会的に機能するための条件
4 テクノフーズへの期待が高進する二十一世紀
5 「科学的精度」ではなく「言説的精度」の問題
6 私的領域の問題としてではなく
第5章 リスク“ディス”コミュニケーション――正しく食べなさい
1 「食べてはいけない」と風評被害
2 事実経過
3 実際にはどのように報じられたか
4 リスク“ディス”コミュニケーションの本質
5 〈現在化した未来〉における変更可能性
6 政策・技術としてのリスクコミュニケーション
7 〈現在化した未来〉で負わされる責任
第6章 永遠のゼロリスクと禁断のゼロリスク――正しく消費しなさい
1 消費者市民社会の狭隘さ
2 禁断のゼロリスクと科学的正しさイデオロギー
3 対立的に語られる科学と価値
4 リスクをめぐるコミュニケーション
5 隷従と忖度を超えた胃袋の連帯は可能か
おわりに
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