富田 昭次(著)
四六判 264ページ 並製
定価 2000円+税
ISBN978-4-7872-3215-1 C0036
品切れ・重版未定
奥付の初版発行年月 2003年05月 書店発売日 2003年05月21日 登録日 2010年02月18日
明治期から西欧化政策の一環として建設されはじめて風景とリゾート地を創出し、一方では植民地支配の象徴となり、舞踏会や洋食など西洋文化流入の窓口にもなった社交の場の発展を史料から掘り起こし、時代の鏡=ホテルという文化装置から近代日本を振り返る。
まえがき
第1章 居留地文化の華
1 ブームタウン横浜と神戸のにぎわい
『日本ホテル略史』の最初は長崎屋/忘れられた最初のホテル/最高水準を誇ったグランドホテル/みやげはグランドホテルでの入れ墨/居留地以外の旅館では最悪の日々/明治期にも存続した講中定宿/東南アジアの名ホテルを凌駕/野菜を栽培して供したグルーム/雑談が初のゴルフクラブを生む
2 日本人ではじめてホテルを建てた男
多忙を極めた清水屋/周囲から資金を集めて/明治時代以前に欧米を見た人々/大政奉還のなかでホテルを建設/欧米の最上のホテルに匹敵/外観を特徴づけたナマコ壁と塔屋/喜助の不慣れなホテル経営/近代化の節目・明治五年/岩倉具視の支援を受けた精養軒/森有礼の西洋風結婚披露宴/五代友厚が大阪初のホテルを発注/長崎初の西洋料理店で腕前を披露
第2章 政治主導で誕生した迎賓館ホテル
1 外務卿・井上馨の挑戦
新政府の最初の迎賓館ホテル/西洋料理が正餐の料理に/日本人と外国人の意識の大きなズレ/不平等条約改正のために/鹿鳴館は失敗作だった/井上外務卿の辞任/ベルツに評価された井上馨/石造りの建物に似せた工法/財界の巨人たちが経営に参画
2 札幌に眠る日本最古のホテル遺構
国指定の重要文化財/豪華な建築となった豊平館/最先端の建築工法/ぜいたくなシャンデリアの中心飾り/必要性を疑う新聞の批判記事/三代の天皇の行在所に/アインシュタイン博士感動す/市内最多の結婚披露宴数
3 外国人を厚遇した古都のホテル
大津事件で有名になったホテル/好評を得た也阿弥ホテル/伊藤博文肝いりのホテル計画/青年実業家・西村仁兵衛の奮闘/徐々に関心は高まるものの/ホテルチェーンの結成/後藤新平の意を受けた迎賓館ホテル/西洋文明の「模倣」から「獲得」へ/新しい和洋折衷様式/天皇の生活様式の洋風化が進むなかで
第3章 リゾート時代の幕開け
1 在留外国人が求めた避暑地
大きな名を残しそこねた開化楼/いまも残るサムライハウス/イギリス人の女性旅行家が感銘/ガーディナーとの出会い/極彩色の日光彫で装飾/万平ホテルの源は旅籠/洋風に改装した亀屋ホテル/初の純西洋建築ホテル/サロン風の三笠ホテル/ゴシック様式風の重厚な建築/豪華客船に乗って料理修業/日本人によって「再発見」された避暑地
2 温泉浴場と海水浴場の発展
湯治から遊興の手段へ/山口粂蔵と神風楼/福沢諭吉と箱根の近代/日本趣味の本館建設/写真館を開業した嶋周吉の存在/ホテルと深い関係になる写真館/外貨獲得のために/交通の便が良くなる箱根/ベルツ博士の温泉ホテル/転地療法が湘南の開発を促す/営業不振で経営者も変転/新しい海水浴文化/行基伝説の雲仙も変貌/日本初の公共ゴルフ場も誕生/ベビーシッター同伴の長期滞在/風景で外貨獲得をめざした時代
第4章 近代国家の象徴としてのホテル
1 駅前ホテルの誕生
日本初の私鉄が東北でホテルを/サービス自慢の山陽鉄道もホテル経営/鉄道の国有化にともないホテルも国営化/連日のようにおこなわれた記者会見
2 植民地・満州でのホテル経営
就職難で満州へ/強大な組織・満鉄の誕生/夏目漱石の嘆き/帝政ロシアへの対抗意識から/「営利を以て目的とするものにあらず」/星ケ浦のリゾート開発/中国を威圧した停車場とホテル/日本人の郷愁を誘った満州の温泉/血なまぐさい部分を内蔵した植民地ホテル
3 観光立国への目覚め
第一次世界大戦による盛況/大きく揺れ動いたホテル計画/俊英・木下淑夫の活躍/JTBの創設とその活動/幻に終わった空前のホテル計画/総合社交場をめざして/陰鬱な国民性を改善するために/皇居を見下ろす立地が災いを招く/国際観光局の創設/風光の資本化という新しい発想/史上はじめてのホテルブーム/ホテル建設が決定した意外な舞台裏/合格点を与えられた日本のホテル/悩みの種は前近代的な旅館の茶代
終章 ホテル文化の多様化と成熟
ホテルという名の高等下宿屋/弱者救済の理念もあるホテル/本格的な長期滞在型ホテルの登場/東洋最大のビジネスホテル
あとがき
参考文献
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