佐藤 直樹(著)
四六判 272ページ 上製
定価 2400円+税
ISBN978-4-7872-3100-0 C0036
品切れ・重版未定
奥付の初版発行年月 1995年03月 書店発売日 1995年03月25日 登録日 2010年02月18日
人間を「近代的」な責任ある主体として前提する刑法は、「歴史的・伝統的」/「高度資本主義的」重層システムの社会のなかで大きく揺らいでいる。頻発する「わけのわからない」犯罪が示す基底を、フッサール現象学を援用して把捉する。
はじまり
1 〈生活世界の刑法学〉の方法──世界とは自分のことなのだ
(1)〈犯罪の現象学〉の方法──犯罪は「つくられる」ものだ
1 犯罪現象の「素朴」な見かたとしての「犯罪論」
2 刑法における〈主観/客観〉問題への白井駿の答案
(2)フッサール現象学と〈犯罪の現象学〉──「まず世界が存在し、自分はその世界のどこかに配列されている」という世界像のエポケー
1 方法的独我論と〈主観/客観〉問題
2 「感じ」とは知覚直観/本質直観のことだ
(3)〈生活世界の刑法学〉と主観と客観の「あいだ」──「一人称」の現象学
1 従来の刑法学はカッコに入れられる
2 「あいだ」は〈超越論的主観〉へと還元される
2 システムとはなにか──高度資本主義/伝統性という二重性の狭間で
(1)高度資本主義=高度消費社会としてのシステム──解放性と抑圧性
1 システムによる家族の商品化
2 停滞の時代とシステムの抑圧性の顕在化
(2)歴史的・伝統的なものとしてのシステム──「世間」とはなにか
1 「権力」としての「世間」とは
2 相互扶助共生感情と抑圧感
3 いつの間にかという「気分」
(3)システムと法現象──「隣人訴訟」をめぐって
3 法言語のなかの人間/システムのなかの人間──歴史的な視点から
(1)中世における「システム」と人間──「責任ある主体」の不在
1 呪術的世界の「犯罪」と「刑罰」
2 生きつづける「世間」としての「システム」
(2)近代における「責任ある主体」の誕生──法言語のなかの人間
(3)現代における「責任ある主体」の退場──システムのなかの人間
1 ある息子殺し事件判決の心情と論理
2 システムのしわざとしての「福岡美容師バラバラ殺人事件」
4 ふたつの人間像の「ずれ」──“匿名”のためらい
(1)“匿名である”ということ──「子どもの権利」をめぐって
1 ゆらぐ匿名報道
2 イギリスにおける「司法モデル」と「福祉モデル」の相剋
3 「子どもの権利」とシステムのなかの人間
(2)“匿名でない”ということ──「責任ある主体」の謎
1 インフォームド・コンセントにあらわれた「責任ある主体」
2 「服従=主体—化」とシステムヘの従属
5 システムの侵入と刑法の解体──近代刑法の矛盾と破綻とは
(1)システムのなかの「意思」──刑法における人と人との「あいだ」
1 近代的な「個人」の所有する「意思」
2 伝統的システムの構成原理としての「あいだ」
3 〈超越論的主観〉に「外部」は存在しない
(2)科学的・合理的世界観と「動機」さがし──刑法における「因果関係」をめぐって
1 「動機」は犯罪の「原因」になりうるか
2 科学的・合理的世界観による「因果関係」の製造
3 「魔がさした」という「動機」
(3)犯罪という「事実」なんて存在しない──刑法における「真実」と「過去」
1 裁判における「真実」の追求とは
2 「事実」としての「過去」は存在しない
3 「過去」とは言葉のことである
6 システムに刑法は追いつくか──社会の未来/刑法の未来
(1)肥大化するシステムと「いじめ」──子どもたちの“諦め”
1 少年非行をみる目の変化
2 システムによる「いじめ」の市場化=商品化
3 資本主義は「中世」になった
(2)透明な停滞の時代の刑法──〈生活世界の刑法学〉にむけて
1 近代合理主義としての刑法
2 「ゆるし」と「あいだ」の再検討
おしまい
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