越境する近代 15
佐々木 陽子(著)
A5判 288ページ 上製
定価 3400円+税
ISBN978-4-7872-2096-7 C0320
在庫あり
書店発売日 2022年11月16日 登録日 2022年08月30日
総動員体制下、高等女学校生に課せられた軍事教練の実態を聞き取り調査から描き、女性の身体を「兵士化」するありようを掘り起こす。さらに軍属として情報通信業務に従事した女子通信手の任務内容も明らかにし、戦時下の女学生の動員の内実を浮き彫りにする。
戦前、女子の中等教育を担った高等女学校(高女)は「良妻賢母」の再生産の場とみなされてきた。しかし、満州事変から始まった15年戦争下(1931-45年)では軍人を指導教員に招聘して竹槍訓練・匍匐訓練、さらには銃や木銃を使った射撃訓練を含む教練を実施したり、生徒を地域の軍隊に短期入営させて軍人に教練指導を委託したりという高女もあり、身体を「兵士化」する訓練が日常化していった。
そうした軍事教練の実態を、関東地方を中心に5つの公立高女の卒業生を対象にした聞き取り調査から探り、高女の変容の要因を分析する。
同時に、女性の戦時動員のなかでも空白部分の女性軍属、とりわけ女性通信手に光を当てる。部隊や県庁への防空警報などの連絡係、敵機からの防衛を担う情報係、海上の船舶などからの略号による無線航空情報を翻訳する係、軍隊の機密を知ることができる任務などの軍属としての女性の正規軍への参入の内実を、北海道札幌と愛知県名古屋の軍隊に通信隊員として採用された高女卒業生への聞き取り調査から解明する。
高女での軍事教練と女性の通信隊員の歴史から、戦時下の女性の動員の実態を浮き彫りにする貴重な成果。
序 章 軍国主義と女子の身体
1 戦時下の女子教練と女子の軍属
2 本書の調査方法
3 本書の構成
4 高女生の「身体の男性化」
第1章 戦時下の高女とジェンダー――研究対象と先行研究
1 高女の歴史と特徴――本書の研究対象
2 高女での「良妻賢母」教育の研究
3 軍国主義教育での女子身体の再構築
4 戦争と高女研究
第2章 戦時下高女の女子教練にみる「身体の男性化」
1 「健康な母」と「女らしさ」の綱引き――女子体育と体力章検定
2 女子教練の制度的概要
3 女子教練の実態
4 女子武道
5 「体錬科」の全体像
6 学校誌による女子教練の全数調査――埼玉県と千葉県
第3章 戦時下高女の軍事化の具体的様相――関東・東海地方の聞き取り調査から
1 軍国主義型校長――埼玉県立熊谷高女
2 軍隊との関係の希薄さ――千葉県立市原高女
3 軍事的重要拠点の高女――静岡県浜松市立浜松高女
4 厳しくない教練――神奈川県立秦野高女
5 「逸脱」した教育実践――東京都立深川高女
6 高女での軍事化の類型化
第4章 戦時下の高女の学校生活――高女生身体への視線の交錯
1 戦時下の高女の学校生活
2 忠君愛国的身体の構築と「身体の男性化」
3 高女生の「身体の労働者化」と「労働の男性化」
第5章 女子通信手としての軍属経験――「労働の男性化」の一側面
1 女性軍属としての女子通信手
2 愛知県名古屋地区の女子通信手
3 北海道札幌の女子通信手
終 章 調査が問いかけるもの
1 戦時下の女子の身体をめぐる錯綜した視線
2 軍国主義の潮流に抗うことの困難と可能性
資料1 学校体育教育に関する変遷
資料2 参照・引用した学校誌
初出一覧
あとがき
索引
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