A5判 256ページ 並製
定価 2800円+税
ISBN978-4-7872-2080-6 C0021
在庫あり
書店発売日 2018年12月21日 登録日 2018年11月19日
「日本経済新聞」
朝刊 評者:玉木正之(スポーツ文化評論家) |
高度経済成長と重ね合わせて、強烈なまでの成功神話として記憶される1964年のオリンピックを、スポーツ界と都市という2つの視点から読み解き、語られない実態を浮き彫りにする。64年大会の遺産=レガシーに正面から対峙して、インパクトを冷静に見定める。
高度経済成長と重ね合わせて、強烈なまでの成功神話として記憶される1964年のオリンピックだが、はたして成功に満ちあふれていたのだろうか。64年大会の遺産は日本をどう変えていったのだろうか。
本書では、スポーツ界と都市という2つの視点から、成功神話の陰にある語られない実態に迫る。第1部では、スポーツの情報化、指導者と根性論、女性スポーツの大衆化など、スポーツ界への影響の大きさを史料から掘り起こす。第2部では、メガイベントが作り出した道路整備とその影響、都政との関係性、大阪万博や新潟震災から見る東京など、インフラや政治、地方格差の問題を検証する。
2020年大会への過剰な期待や歓迎ムードとは距離を置き、ネガティブなものも含めて64年大会の遺産に正面から対峙して、インパクトを冷静に見定める。
序 章 なぜいま一九六四年東京オリンピックを問うのか 石坂友司/松林秀樹
1 六四年大会と現在
2 本書の構成――六四年大会は成功したのか
第1部 オリンピックの熱狂と内実――オリンピック至上主義の誕生と大衆化の行方
第1章 成功神話の内実と記録映画がもたらす集合的記憶 石坂友司
1 準備期での六四年大会の混乱
2 六四年大会に対する評価
3 大会を人々はどのように記憶したのか
4 オリンピックはどこまでナショナリズムを高めたのか
5 記録映画に込められた意図
第2章 情報社会化のなかの東京オリンピック――都市、情報、身体 新倉貴仁
1 都市、光学、情報
2 東京オリンピックと日本IBM
3 リアルタイムの社会
4 身体の計測と効率化
5 スポーツと情報の交錯――現代都市での生
第3章 女性スポーツの大衆化――東洋の魔女からママさんバレーへ 高岡治子
1 ママさんバレー誕生の時代背景
2 東洋の魔女からママさんバレーへ
3 ママさんバレーの構造
第4章 根性論の系譜学――六四年東京オリンピックはスポーツ根性論を生んだのか? 下竹亮志
1 スポーツ界の根性論
2 学術界の根性論
3 経済界の根性論
第5章 パラリンピックの開催――東京パラリンピックが生んだもの 渡 正
1 個人のレベルから見たパラリンピック
2 公的な言説でのパラリンピックの価値
3 パラリンピック批判――メディアのレベル
第6章 背中合わせのオリンピックと地域スポーツ 尾崎正峰
1 人々のスポーツ活動の胎動と終息
2 オリンピック東京大会と地域スポーツ振興の隘路
3 スポーツ振興施策の地域的展開――「三鷹方式」の創出とその背景
第2部 都市の改編とインパクト
第7章 オリンピックで見上げた空はなぜ青かったのか――メガイベントの隠れた効用とその両義性 町村敬志
1 六四年大会の都市的意味
2 「急がされた」オリンピック――一九八八年ソウル大会との比較から
3 どこに「空地」を見つけるか――「脱軍都」「脱皇都」から「再ナショナル化」へ
4 周辺へとにじみ出す東京――首都圏形成とオリンピック
5 メガイベントの隠された効用とその両義性――二〇年大会は何をもたらすのか
第8章 オリンピックに向けた道路整備――六四年大会が残したもの 松林秀樹
1 道路網の整備過程――首都高速の建設
2 東京圏の高速道路網の拡大――三環状九放射
3 高速交通網の弊害――東京にもたらされたもの
4 東京の道路問題の現代への「接続」
第9章 なにが革新都政を誕生させたのか 丸山真央
1 世論調査の二次分析による現代史の再検証
2 階級対立?
3 革新統一の成果?
4 なにが争点だったのか?
5 イメージ選挙?
第10章 大阪万国博覧会と地域整備――万博関連事業の成立と展開 高岡裕之
1 万博会場の決定経緯
2 万博関連事業と近畿圏整備
3 万博関連事業の実施
第11章 警告する新潟地震――オリンピックを介した二つの「破壊」 水出幸輝
1 “テレビ地震”の衝撃
2 「復興の灯」としての聖火
3 「被災地」不在のオリンピック
4 オリンピックに沸く心性
あとがき 石坂友司/松林秀樹
在庫あり
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